黄色い本―ジャック・チボーという名の友人 (アフタヌーンKCデラックス (1488)) |
はじめに、この作品を面白いと思えたことが単純にうれしい。
いくら手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しているとはいえ、万人に解される内容では決してないと思うから。 表題作は主人公のある読書体験を描いたものだが、普通ならまず思いつかないというか、 面白い話になりそうにないことをテーマにしている(そして結局、すばらしい話にしてしまっている)ところが、とにかく斬新。 相当のテクニックがなければ無理であろうことは素人目にも明らかで、著者の力量に驚くばかりだ。 高校生の主人公が読む小説の舞台となっている100年近く前のヨーロッパと、 主人公が生きている日本のどこにでもある日常風景が、ページを読み進めるにつれて溶け合っていく。 虚と実の境目があやふやになる、極上の読書体験とはそういうことだ。 主人公が本の中の世界に酔い、その姿を見て読者である私たちが酔う。 “読書の幸せ”の連鎖反応がそこでは起こっている。 「CLOUDY WEDNESDAY」は、子どもの動きがリアルでかわいくて、 「これこれ!」とページをめくりながらほくそ笑む自分がいた。 冬野さほさんの原作と合わせて読むことをオススメします。 |
絶対安全剃刀―高野文子作品集 |
高野文子の「絶対安全剃刀」は呉智英の「現代マンガの全体像」で紹介されている。それを読んでこの本を買おうと思った。どの作品も印象深いものばかりです。何度も読んで雰囲気を味わったものだ。この作品では主に若い女性の心象を題材にしている。どきっとする表現も少なくない。ほかの作品集「おともだち」の「盛子様のひな祭り」もお気に入りだ。「盛子様の怒りが頂点に達したとき」などというフレーズは何度思い出しても笑ってしまう。著者のマンガに対するスタンスも好感が持てる。ご存知のように極めて寡作です。自分の生活を大事にしつつマンガへの情熱も捨てない。肩の力を抜いたエンターテインメントで読者をリラックスさせるちからはそういう著者の生き方も影響していると思う。 |
棒がいっぽん (Mag comics) |
まるで両親の若い頃のアルバムを見るような、自分は直接体験していないのに記憶のどこかが知っているような、快い懐かしさでいっぱいにさせてくれる本でした。やっぱり高野文子最高! |