Archidemo in Second Life 38
![]() グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) |
数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)の世界を、まずは堪能しましょう。仮想リゾート空間に暮らすAIたちの、永遠の夏の世界。この世界に濃密に秘められた背徳の気配。そしてその背徳を抉り出しながら世界をまるごと蹂躙していく圧倒的な力。
別次元の論理は、それが不可知であることしかつかめない。世界を形作る論理基盤に触れることなく、その異質な現象だけを描いていく。なぜ?なぜ?これがセンス・オブ・ワンダーだ。説明しちゃつまらない。 論理の欠落は、次のシリーズで別なエピソード群として描かれる。やるねっ。 |
![]() 象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA) |
四つの中短篇からなる作品集。 思うに、著者は官能の人なのではないか。 あるいは、官能を言語化することに何かこだわりを持っているのではないか。 「官能の言語化」というと詩的な表現を連想してしまうかもしれないが、 著者の書く官能は、しっかりとした小説の文体で示されている。 表紙の「kaleidoscape」という言葉は、なるほど本書の読書体験をうまく表現している。 あるいは、様々な種の官能を液化させ、スープにして飲み込んでいくような読書体験。 小説家とは文芸家でもあるが、この著者は優れた芸を身につけているようだ。 物語の作り手としても、癖のあるアイデアに満ちたおもしろい話を書いている。 よい意味で期待を裏切る展開がどの話にも組み込まれており、飽きずに読ませる。 四篇のうち三篇は、表現の巧みさもあいまって、非常に官能的で印象的だった。 ただ、短篇ではどうにも窮屈そう。 この密度で、まして兼業作家ともなれば、寡作であることも宜なるかな。 |