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魯山人の料理王国
魯山人といえば某有名なグルメコミックを思い出す人もいるはすだ。魯山人を目標とし「美食倶楽部」を経営する父親と反目する息子が料理対決を繰り返すという「あの」有名コミックだ。

そのコミックにはフランスの伝統ある鴨料理店で、調理中の鴨を持ってこさせ、有名店のオリジナルソースではなく、わさび醤油で食べたという魯山人の奇抜な行動が引き合いに出されているが、この本によると事実らしい。その行動の背景を含めた詳細も一読の価値がある。

もちろん、グルメに関する本であり、ふぐ、うなぎ、あゆ、はも、ぐじ(甘鯛)など高級食材が満載である。しかし意外に豆腐、納豆、かぶなどの庶民的な食材も登場し面白い。また初版は昭和30年代に発行されているので食材の値段などが現代とは異なるが、グルメの対象となる食材というものが意外に変化しないということもわかり面白いと思う。「変わらない美味しさ」を知りたいなら、読む価値がある一冊。


 

魯山人の美食―食の天才の献立 (平凡社新書) (平凡社新書)
 著者が書いた「知らざれる魯山人」が大変面白かっただけに本書もすぐに購入した。

 魯山人は書、陶芸、美食で知られる芸術家である。書と陶芸は 現在も魯山人の作品を見ることが出来る。それに対し 美食に関しては 星岡茶寮などの「伝説」は残っているが いかんせん 実際に食べるという行為を通じないと 理解できない面は否めない。
 本書においても それは同じだ。魯山人の考案したレシピを通じて 著者は 魯山人の美食家としての独創性を表現しようとしているが やはり 最終的には食べないことには理解できない点は残る。

 但し それは贅沢な希望というもので 本書が目指した魯山人の「美食」の解明への意気込みは十分買いたい。魯山人は 原材料の価格の高低からかけ離れていたところで 自らの美食を追及した様が見えてくる。貧しく安い材料で 美食を創り上げる「眼力」は 価格という世俗の基準を離れた すがすがしいものであった様が浮かび上がってくる。

 それが本書の徳だ。


 

 

知られざる魯山人
著者の亡父は、北大路魯山人とかなり深い交流のあった人物とのことだ。そして、父親が売り払ってしまうまでは魯山人作の陶器が日常の食卓で使われてもいたとのことだ。そんな著者が、毀誉褒貶の多い北大路魯山人という人物をどのように捉えているかという興味で手に取った。

結論から書いてしまうと、著者は魯山人が持つ様々な二面性を認めつつも彼を肯定的に捉えている。しかし、その結論は関係者への取材、様々な文献等をあたったという経過を経てから導き出されたものでなく、はじめから結論ありきだったように感じられた。

そして、様々な二面性を持つといわれる魯山人の隠れた一面を浮き彫りにしてみようという意気込みも感じることはできず、エピソードの検証作業(それも魯山人にとってマイナスと思われることはあまり掘り下げない)をしているという印象が残った。それでは、普通の人には理解できないであろう魯山人の天才を描ききれないと思うし、評伝としても面白みに欠けるのではなかろうか。

また、この作品は、生い立ちから芸術家として世に出るまでの間の記述にかなりのページが割かれているので人間としての魯山人を描こうとしたと思われるが、それにしては重要と思えるエピソードに対する掘り下げが浅いし平坦だ。だが、芸術家としての魯山人を描こうとしているのでもないとも思える。

労作であり大作ではあるが、内容的にはどっちつかずの中途半端な作品に感じられた。だけど、執筆お疲れ様でしたの☆×3。

 

魯山人 動画

【本陣】 炎の芸術・備前焼 備前土水指 2-1




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