ライヴ・イン・ハトヤ |
ちょっと期待しすぎで聴いたので、一回目は「なぁ〜んだ、ソレ程でもないや」という感じでした。
しかし繰り返し聴くと、何とも言えず可笑しくて、昔の深夜ラジオの持つ「音で想像させてくれる楽しさ」 みたいな魅力を味わえます。 もともとタモリさんの芸風が好きなんですが、赤塚さんの可愛らしいキャラクターも見逃せません。 今風の笑いとは違い、大爆笑を期待するとかなり肩すかしをくらいますが、 ドサッとしながらインテリジェンスが漂う、「おやじギャグ」とは一線を画す笑いが味わえます。 「声」の持つ魅力も感じました。 |
白洲正子“ほんもの”の生活 (とんぼの本) |
白洲正子さんほど美というもののの奥深さやぬくもりということをこれほど垣間見させてくれる人はいないのではないでしょうか?昨今のアンティークブームや欧米ブームで、ライフスタイル提案者?やアンティーク収集家のアンティーク雑貨てんこ盛りのお宅自慢本は山ほど出てますが、どれも家とのバランスが奇妙で見ていて気持ちの悪くなるものが多い。いんちきヨーロピアンハウスのオンパレードに違和感を感じている人は、白洲さんご夫妻の武相荘での暮らしにその答えを見出せるはず。「武相荘」のインテリア大公開からはじまり、生け花の話、器の話、着物の話、洋食好きな正子さんのお気に入りのレシピが載っていたりと読み手を飽きさせない一冊。ただ個人的には、大好きな土間部分の写真がないのがちょっと残念だったな。。まさに成金ではない本物の究極のセレブライフ本と言えるでしょう。本当の豊かさを感じさせてくれる一冊です。 |
千利休―無言の前衛 (岩波新書) |
保守的な伝統芸能とばかり思っていた、茶道「茶の湯」が実は古典もモダンも超越した「前衛芸術」だったことをこの本で初めて知りました。 作法に重きをおき、堅苦しいイメージのあった茶道と、NYやロンドンのレストランのトレンドに一時期見られたような「禅」や「和」という静謐さにスポットをあてたモダンアートの世界、実はそのどちらとも違い、実際の千利休の持つ世界観は、「もてなし」というものへのユニークさと斬新さという面でアグレッシブなほどの挑戦者だったことがわかる。 いままでの「静」のイメージから茶の湯が体系づけられるまでには「動」であったことがわかる一冊。加えて現代の茶の湯の世界は伝統芸能としての保存にとどまっているのか、時代の変化につれてやはり挑戦しているのかを新たに興味を持つことができた。 映画「利休」の脚本ができるまでの著者の千利休研究の進み具合と合わせて、秀吉への挑戦や駆け引き、茶の湯が体系づけられるまでの流れがとてもわかりやすくまとめられています。 |
超芸術トマソン (ちくま文庫) |
この本の元になった赤瀬川原平の連載が白夜書房のウィークエンドスーパー、写真時代
で発表されてから24年ほどになるのだろうか。一時のブームにすぎないと思われた本書がこ れほどのロングセラーになって刷数を重ねていると誰に想像できただろう。 トマソン観測は路上観察に発展解消したようなアナウンスが出版元から成されている。 ほんとうにそうだろうか。 無名な人達が発見のおもしろさに突き動かされて、ある者は煙突に登りある者は休暇を とって街を歩き回った。美しいだけで全く役に立たないものの為に。 そんな有り様が赤瀬川の筆を動かし、独特な(異様と言ってもいい)ダイナミズムがあふ れた本になっている。 内需拡大→地上げバブル にさらされた東京の町のナマな記録も本書の切り離せないバッ クグラウンドとして色を放っている。 トマソンとは決して有名な先生達が頭でひねくり出した観念的な思いつき、平凡な物の しゃれた見立てではなくて実在するものだったと20数年は証明しているのではないだろうか。 また美術・芸術とはなんなのかを美術を学び、志す人には問い直してくる青春の書でもあろう。 (さしづめ美術界のサリンジャー?) なお単行本、白夜書房版は連載途中での出版のため文庫版 に入っている連載末期の内容は入っていない。写真も若干違いがある。 写真の印刷製版は文庫判がむしろ見やすい。 カバーデザインはどちらも平野甲賀。 本書の前にウィークエンドスーパーなどで連載していた「自宅でできるルポルタージュ」 をまとめたのが「純文学の素」であってその連載途中でいきなり「というわけでトマソンである」 と唐突に始まったと記憶しています。 |