Archidemo in Second Life 36
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) |
本当は続編を読んでから書くべきなのだろうが、面白かったので。
しばらくこういった本格的なSFからは遠ざかっていたので、どんな位置を占めるのかは皆目わからないが、久々にわけのわからない法則でできたわけのわからない世界を彷徨う感覚を堪能した。文章の巧みさも、私のようなSF素人の読者をぐんぐん引っ張っていく要素の一つであろう。 書店で、あるいはこのサイトで表紙を見て気になっている方、ぜひ読むべきだ。ジャンルなど問わない小説の面白さがここにある。 私も続編はこれから手に入れなきゃなのだが、物すごく楽しみ。 |
象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA) |
四つの中短篇からなる作品集。 思うに、著者は官能の人なのではないか。 あるいは、官能を言語化することに何かこだわりを持っているのではないか。 「官能の言語化」というと詩的な表現を連想してしまうかもしれないが、 著者の書く官能は、しっかりとした小説の文体で示されている。 表紙の「kaleidoscape」という言葉は、なるほど本書の読書体験をうまく表現している。 あるいは、様々な種の官能を液化させ、スープにして飲み込んでいくような読書体験。 小説家とは文芸家でもあるが、この著者は優れた芸を身につけているようだ。 物語の作り手としても、癖のあるアイデアに満ちたおもしろい話を書いている。 よい意味で期待を裏切る展開がどの話にも組み込まれており、飽きずに読ませる。 四篇のうち三篇は、表現の巧みさもあいまって、非常に官能的で印象的だった。 ただ、短篇ではどうにも窮屈そう。 この密度で、まして兼業作家ともなれば、寡作であることも宜なるかな。 |