トキワ荘の青春 7
つげ義春ワールド ゲンセンカン主人 [VHS] |
つげワールドをいろいろな監督が映画化していますが、この作品は自然ですね。監督の存在が感じられない程自然です。前世、因果、を感じさせる詫びたエロスが漂っており、なんとなく好きな映画の一つです。群馬県の湯宿温泉の大滝屋がモデルらしいのですが、見事に老人しか泊まっていなかったり、隣の部屋からお経が聞こえたり、混浴温泉で何かの拍子に、中年女性の女性器が丸見えになったりと、若い頃の、つげ本人の強烈な体験が土台になっているそうです。リアリズムの宿もそうでしたが、もの凄い旅館に出会う運命なのでしょう(笑)つげ本人もこの映画に出演しています。この中の物語では、李さん一家、ゲンセンカン主人が、とても好きです。なぜだろう?不思議なせかいで、つげワールドが色濃いからなのでしょうね。池袋百店会は、映画にすると、よくあるメロドラマのようで、イマイチでした。評価は3と4の間です。 |
無能の人 [DVD] |
つげ義春ワールドは好きで、漫画の方を忘れた頃に読みます。休日寝坊をしながら布団の中で読むとか、休日の夜寝る前に布団の中で読むとか、なんだか、重力に逆らって座っったり、立ちながら読めない漫画で、間違って何冊も続けて読むと、なんだか侘しい気分にさせられます。さて、だいぶ前の作品で確か映画館で観たのをもう一度レンタルして見てみました。つげ本人がモデルと言われていて、竹中監督忠実につげワールドを再現したとして、つげ義春さんは驚いたということです。でも僕は、都心のビルや電車がいまいちイメージに合わなくて、松山とか広島、熊本といった路面電車が走る街を使い、ビルも少し昭和初期の匂いがする銀座の裏の方のビルなどを使った方が、もっと雰囲気が出たような気がします。竹中直人、風吹ジュン、三東康太郎、山口美也子、マルセ太郎、神戸浩、神代辰巳、大杉漣、井上陽水など、個性的な強烈オーラを放っている俳優陣は見物です。マイナーな笑いが素敵です。喧嘩をしながらも、そして貧乏でも、心の底では夫の才能を信じて、安売りしない妻を持つというのは、とても幸せなことでしょうね。雰囲気や侘しさは、やはり原作の漫画の持つ魅力にはなかなか勝てない気がします。比べるものではないかもしれませんけど。。。ちょっといい佳作という気がします。評価は3と4の間と思いました。 |
ねじ式 [DVD] |
多くの方はオープニングに圧巻するでしょう。
未だかつて見たことも無い、想像のつかない世界観。 石井ワールドと共に、つげ義春のダークな世界を堪能できます。 中でも「もっきり屋の少女」のシーンは見もの。 後にこの作品は多くの漫画家に影響を与えています。 |
蒸発旅日記 [DVD] |
漫画家つげ義春のエッセイ「蒸発旅日記」を元に他の作品も取り入れて映画化した作品。
色鮮やかに映像化された独特の世界は、つげワールドというよりもアングラ舞踏的な 香りが濃厚です。同じ映画なら「無能の人」の方がつげさんの世界を比較的忠実に映像化 しようとしています。ですから全然別個の作品として楽しむのが正解でしょう。 あまり一般に知られていない俳優さんを起用したのは正解だと思われます。 無名の女優さんたちがそれぞれ魅力的でよかったです。 映像的には特に驚きといったものは感じられませんでした。 なんといっても原作のつげさんの行動が一番インパクトがあるのですから。 特典映像で動くつげさん本人の姿がたっぷり拝めます。 お元気そうで、とてもうれしくなってしまいました。 |
ねじ式 (小学館文庫) |
つげ義春の漫画には麻薬性を強く感じる。
「ねじ式」は つげ義春の漫画を読んだ初めての作品である。大学の友人と鈴木清順の映画を見に行った際に 鈴木映画に似た漫画だと教えてもらったのが知ったきっかけである。 今考えてみると 鈴木清順の映画とは 全く似ていないとしか思えない。どちらも好きだがジャンルはぜんぜん違う。但し そんな友人のおかげで つげ義春を初めて知ったわけだ。 「ねじ式」という漫画も 筋を追ったとしたら わけがわからないとしか言いようが無い。「退屈だ」と感じる方がいらっしゃるとしたら 筋を考えてしまうからだと思う。 この作品は そんな下手な解釈を求めるべきものではないと思う。つげ自身が 自分の見た夢を描いたと言っていたが おそらくそれは本当なのだと思う。僕らが 一種の迷宮である この漫画の中で辿っていくのは つげ義春という一人の人間の「悪夢」なのだ。「悪夢」は時として美しいことも確かである・ つげの「悪夢」に付き合っていくうちに癖になる。それを麻薬性という いささか陳腐な言葉で表現するしか 僕には表現方法がない。 |